抄録
本論文は、ダイバーシティ・マネジメント(DM)についての議論に焦点を絞っている。ダイバーシティの本質を理解するために既存のさまざまな定義をまず考察し、研究枠組みにそった検討の結果、企業が組織外部と組織内部からの圧力要因に直面していることを明らかにした。多国籍企業の場合は、さらに広範な次元からの圧力に直面する。特に国内とは異なる外部環境、つまり進出国の歴史的、法律的、社会・倫理的、デモグラフィー変化的な要因が存在する。組織内部からは、競争優位、国際化、組織的同期化(isomorphism)という要因がDM導入に大きく影響している。既存研究をふまえ、DMの戦略的目標を探求した。ひとつの結論として、多国籍企業におけるDMの戦略的目標は、ただ単に組織的利益にのみに通ずるもののではなく、社会的利益を含めたものにつながるといえる。それはすべての持続可能性を確かなものとする。