国際ビジネス研究
Online ISSN : 2189-5694
Print ISSN : 1883-5074
ISSN-L : 1883-5074
提携をベースにした国際分業関係の構築 : 工作機械における日台提携の事例
高 瑞紅
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 6 巻 1 号 p. 13-31

詳細
抄録

国際分業が益々進展している中、本国拠点と海外拠点の各拠点で行う事業の選定、言い換えると、企業全体の競争力と効率性を考えた上での拠点間機能分化(すなわち「企業内拠点間機能分化」)を推進しながら国際化を進めることが重要な課題になっている。他方、サプライチェーンや価値連鎖の中で、自社で行う部分と外部企業へ委託する部分の選別、いわゆる「内部化の選択」と並行して、外部企業と行う企業間国際分業における協力的な関係構築も重要な課題として浮上している。とりわけ、海外企業と協力的な関係を構築するための方策は、垂直統合による自前主義を好んで採用し続けてきた多くの日本企業にとって、喫緊の課題となっている。本稿は、中国進出している日台2社の事例を取り上げ、戦略提携をベースにした企業内・間国際分業の展開過程について考察する。本稿で取り上げる日本工作機械メーカーは、成長市場である中国への進出で出遅れたため、迅速かつ着実に生産拠点を設立しながら市場シェアを拡大していく必要があった。その際、既に中国市場で部品調達のネットワークと販売チャネルの構築などで経営基盤やノウハウを持つ台湾企業は魅力な提携パートナーであった。また、懸念される産業の空洞化を避けるとともに、ハイエンド市場での競争力を維持するためには、本国拠点の事業強化も図る必要があった。つまり、拠点間機能分化という国際分業の課題も抱えていた。よって、本稿の事例は、国際提携と国際分業を同時に考察するに相応しいものである。日台2社は、当初からの合弁事業をベースに、意図せぬ複数の協力的な分業関係を構築し、企業間協働の効率改善を実現する事業展開を可能にした。国際提携において、パートナー間の協働を通じて形成される良好な企業間関係が、分業体制の形成及びその長期的な協力関係の維持を可能にする基盤となった。つまり、国際提携は、国際分業体制を円滑に構築する際に重要な役割を果たすことを示唆している。また、提携をテコにして展開した国際分業が複数存在することが機会主義的な行動の牽制に効果を発揮し、提携関係の維持を強固なものにした可能性もある。結果として、パートナー双方が国際分業から得られる成果を長期に渡り享受し、それが更なる国際提携の維持・強化という好循環を生みだした。

著者関連情報
© 2014 国際ビジネス研究学会
前の記事 次の記事
feedback
Top