国際ビジネス研究
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研究ノート
新興国におけるR&Dの現地適応
デンソーのタイにおけるR&D拠点の事例分析
潘 卉
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2016 年 8 巻 2 号 p. 141-158

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抄録

グローバルR&Dに関する既存研究の多くは、本社に集中したR&D能力をいかに海外拠点に移管して活用することかに注目している。一方、近年重要性が高まってきた新興国におけるR&Dの課題に対して、「現地適応」の側面が特に強調され、本国と切り離して現地R&Dを行うべきという論説が盛んである。そのため、新興国の文脈で、現地R&D拠点構築のプロセスにおいて、本国資源・能力の移転と製品R&Dの現地適応との関係のメカニズムをさらに探ることを、本稿の目的とする。

事例分析の対象として、デンソーのタイにおけるテクニカルセンターの豪亜地域でのR&D活動を取り上げる。デンソー本社からDIAT T/Cに対する資源・能力の移転と現地開発機能の形成・強化を詳述した上、移転が現地適応を促進した事例に焦点を当て理論的分析を行った。結論として、新興国環境の「不利」を克服するために、本社の資源・能力を現地に移転することによって現地R&D拠点能力を高め、そのように能力を向上させたことで現地のR&Dに関する問題が解決され、現地に適応した製品開発が推進されたという、新興国におけるR&D拠点の製品現地適応に向けての一つのパターンを示した。

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