国際ビジネス研究
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統一論題
ボーン・グローバル企業のマーケティング戦略
嶋 正
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2016 年 8 巻 2 号 p. 19-33

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抄録

この論文は21世紀に入り、国際ビジネスにおいて注目を集めているボーン・グローバル企業(Born Global Company; 以下BGCと略す)とマーケティングの戦略を展開する。まず、過去400年以上を振り返る時に歴史学者トーマス・フリードマンのグローバリゼーションの3段階の区分を手掛かりとしてG1.0を1492年から1800年頃まで、G2.0を1800年頃から1994年のWTO(世界貿易機関)の設立まで、そしてそれ以降のG3.0を区別する。ここでは特にWTOの設立以降のG3.0に注目し、BGCが生まれた背景とその成長及びマーケティングを考察することにする。

BGCはシュンペーターの言う「イノベーションを持つ中小起業のグローバル展開」と捉え、まずアメリカにおいて19世紀後半から20世紀初頭にかけてプラグマティズムが生まれ、その考え方がイノベーションやマーケティング思想につながった。それらの考え方はドラッカーにより今日では企業家活動(entrepreneurship)に統合されつつある。マッキンゼー社が1993年にBGCの基本的な考え方を社内報で取り上げ、それを嚆矢として世界的に論じられるようになった。その後21世紀に入りさまざまなタイプのBGCが学会で取り上げられてきている。

日本では、最近になってようやく取り上げる研究者が増えてきているがアメリカ、ヨーロッパに比べて少ないと言える。その理由として考えられるのは、日本の中小企業を起こす方がアメリカやヨーロッパに比べて大企業の下請け構造と捉えられがちであること、もう1つは製造業に研究が偏っているのが挙げられる。

BGCはグローバル企業への持続的発展の1タイプであることを示すことでBGCとグローバル企業の関係を統合モデルとして捉えようとするものである。BGCはグローバル志向が強い中小起業であり、グローバル企業へと持続的成長過程の中で成長している。つまりドラッカーが言うように存続と成長を続ける企業にとって、グローバル化をすることで目的が果たされる。

最後にGoogleの成長モデルを説明する。そしてGoogleがかつての成長企業と異なって技術志向の企業成長を遂げている例を挙げている。

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