2016 年 8 巻 2 号 p. 5-17
新市場の創造と開拓にあたって、本国親会社にとっては馴染みが薄く不案内な事業領域・地理的領域であっても、グループ子会社に当該市場の創造・開拓について潜在能力がある場合、親会社は当該子会社とのあいだでいかなる関係を築き保つべきなのか。本稿は、国際事業展開する日本企業がインド子会社のもつ立地優位性と、親会社には不足しているものの子会社には蓄積されている当該事業領域に関する知識と経験を活用しながら新市場を創造・開拓し、やがてはそれらの成果をグループ全体で活用していくことに成功している事例を取りあげる。具体的には、ハラルに対応したゼラチン(ハラルゼラチン)という新市場の創造・開拓のプロセスに関する事例である。このプロセスにおいて親会社はインド子会社に対してどのようにかかわり、両者間関係はどのように変化していったのか。本稿は、新市場の創造と開拓における親子会社関係の1つのあり方に関する知見を、詳細なプロセス分析から得ようとするものである。