日本イオン交換学会誌
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イオン交換膜電気透析における濃度分極と限界電流密度および水解離
田中 良修
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1997 年 8 巻 1 号 p. 14-28

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抄録

イオン交換膜の脱塩側境膜内では液の比重変化に伴う自然対流, または強制対流が起こる。したがって, 境膜内におけるイオンの輸送現象は, 対流項を考慮した拡張されたNernst-Planckの式により表現するのが妥当である。限界電流密度は膜の現象であるとともに装置の現象である。膜の限界電流密度は脱塩室の流路長小または膜間隔大の装置において測定される。電気透析槽の限界電流密度は, 各脱塩室を流れる液流速が室間で正規分布し, 液流速の最も小さい脱塩室の出口の陽イオン交換膜面で膜が限界電流密度条件に達しているとして求められる。水解離は限界電流密度以上の条件で膜と境膜の界面に形成される水解離層において起こる。水解離層で生じる水解離は液中で生じる現象に比べて著しく加速されている。陰イオン交換膜面で生じる水解離は, 一般に陽イオン交換膜面における現象に比べてより加速されている。これは陰イオン交換膜の4級アンモニウム塩基の第2Wien効果が陽イオン交換膜のスルポン酸基の効果に比べて大きいためである。ところが, 塩化マグネシウム水溶液中におかれた陽イオン交換膜面では, 激しい水解離が起こる。これは脱塩側陽イオン交換膜面に析出した水酸化マグネシウム中のOH基の触媒的化学反応によるものである。

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