日本イオン交換学会誌
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8 巻, 1 号
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  • 韋 悦周, 中澤 竜一, 熊谷 幹郎, 池田 泰久, 高島 洋一, 武田 邦彦
    1997 年 8 巻 1 号 p. 2-13
    発行日: 1997/03/31
    公開日: 2010/03/18
    ジャーナル フリー
    イオン交換体における金属錯体の酸化還元反応を検討するために, 数種の還元剤を用いアニオン交換体に吸着されたFe (III) クロロ錯体を非吸着性のFe (II) に還元溶離する挙動について調べた。塩酸溶液における金属クロロ錯体の生成およびアニオン交換特性を測定し, またサイクリックボルタンメトリーによりFe (III) /Fe (II) のRedox電位に対する錯形成の影響を調べた。次いで, V (III) , Ti (III) , Sn (II) を還元溶離剤に用い, カラム実験によりFe (III) クロロ錯体の溶離挙動について検討した。
    Fe (III) /Fe (II) のRedox電位はHCl濃度の増加に伴って低下し, Fe (III) はクロロ錯体の生成により安定化されるため還元されにくくなる。還元剤によるFe (III) クロロ錯体の還元溶離速度はTi (III) >Sn (II) ≫V (III) となっており, これは主として還元剤のRedox電位によって支配されると考えられる。なお, 吸着性還元剤Sn (II) は溶離産物Fe (II) と良好に分離され, 非吸着性還元剤Ti (III) 及びV (III) はFe (II) に混入することが認められた。
  • 田中 良修
    1997 年 8 巻 1 号 p. 14-28
    発行日: 1997/03/31
    公開日: 2010/03/18
    ジャーナル フリー
    イオン交換膜の脱塩側境膜内では液の比重変化に伴う自然対流, または強制対流が起こる。したがって, 境膜内におけるイオンの輸送現象は, 対流項を考慮した拡張されたNernst-Planckの式により表現するのが妥当である。限界電流密度は膜の現象であるとともに装置の現象である。膜の限界電流密度は脱塩室の流路長小または膜間隔大の装置において測定される。電気透析槽の限界電流密度は, 各脱塩室を流れる液流速が室間で正規分布し, 液流速の最も小さい脱塩室の出口の陽イオン交換膜面で膜が限界電流密度条件に達しているとして求められる。水解離は限界電流密度以上の条件で膜と境膜の界面に形成される水解離層において起こる。水解離層で生じる水解離は液中で生じる現象に比べて著しく加速されている。陰イオン交換膜面で生じる水解離は, 一般に陽イオン交換膜面における現象に比べてより加速されている。これは陰イオン交換膜の4級アンモニウム塩基の第2Wien効果が陽イオン交換膜のスルポン酸基の効果に比べて大きいためである。ところが, 塩化マグネシウム水溶液中におかれた陽イオン交換膜面では, 激しい水解離が起こる。これは脱塩側陽イオン交換膜面に析出した水酸化マグネシウム中のOH基の触媒的化学反応によるものである。
  • 島津 省吾
    1997 年 8 巻 1 号 p. 29-43
    発行日: 1997/03/31
    公開日: 2010/03/18
    ジャーナル フリー
    粘土鉱物やリン酸ジルコニウムなどのイオン交換性層状化合物の層空間を修飾しさらに金属錯体を活性種として導入して, 多様な分子認識触媒の開発を試みた。膨潤性層状化合物は, 金属錯体 (活性種) や反応場の修飾剤 (チューニングゲスト) を導入するホストとして好適な材料である。特にスメクタイト系粘土鉱物は, 膨潤性に優れ極性溶媒により大きく層間を広げることから, 巨大な金属錯体あるいはイオンを種々の方法により容易に層間に導入できる。ここでは, イオン交換法, あらかじめ層間に配位子を導入した層間化学固定化法, 層間重合法について説明し, 金属錯体を固定化した粘土鉱物の構造および分子認識性について述べる。さらに, これら層間固定化錯体を用いて, 分子サイズ選択性, 官能基選択性, 位置選択性, 不斉選択性などの分子認識触媒作用を調べた。特に, Rh-キラルホスフィン錯体を固定化した層間化合物は, 均一系錯体に見られない特有な基質の分子サイズおよび不斉の両選択性を合わせ持つ多重認識性を示した。
  • 糸井 滋
    1997 年 8 巻 1 号 p. 44-55
    発行日: 1997/03/31
    公開日: 2010/03/18
    ジャーナル フリー
    やがて, 半世紀になろうとする研究開発の経過のなかで, 電気透析技術は広い産業分野で実用化され, 現在もなお, 製塩工程での海水濃縮, 塩水淡水化, 排水の回収再利用, および非電解質の脱塩その他の用途に用いられている。一方では, 特殊な性能のイオン交換膜が, 拡散透析法で強酸, あるいは強塩基の分離に利用されている。
    これらの応用の実現には, イオン交換膜そのものの改質のみでなく, 電気透析装置の改良およびプロセス設計技術の開発が大きな役割を担ってきた。
    本稿では, 応用面からみた, これらの開発の経過, とくに著者がその一員としてかかわった開発グループのおもな成果を中心として, それらの概略を述べてみたい。
  • 白坂 明久, 堀江 広, 山田 節夫, 川中 朝一, 内海 忠良, 杉村 富士雄
    1997 年 8 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 1997/03/31
    公開日: 2010/03/18
    ジャーナル フリー
    (株) ニチビがポリピニルアルコール (PVA) を原料とした強カチオン交換繊維 (IEF-SC-3050) の開発に成功してから約15年が経過している。
    さらに, 我々は各種モジュール化が可能な長繊維状イオン交換繊維 (強カチオン交換タイプ, 強アニオン交換タイプ, 弱カチオン交換タイプ, 弱アニナン交換タイプ) の量産技術も確立した。
    これらのイオン交換繊維はポリビニルアルコールと種々の官能基を持った水溶性ポリマーからできている。
    その製法においても, 従来のイオン交換樹脂とは異なっており, そのためイオン交換樹脂に比べ, 次のような特徴を持っている。
    (1) 表面積が大きく, 反応速度が速い。
    (2) 濾紙不織布, 織編布等に容易に加工できる。
    以上の特徴から, ニチビイオン交換繊維は多くの分野において応用が可能となった。
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