国際保健医療
Online ISSN : 2436-7559
Print ISSN : 0917-6543
原著
保健師の活動事例から導く地域国際保健活動における困難さの内容
坂本 真理子水谷 聖子小塩 泰代
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2004 年 19 巻 1 号 p. 11-18

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抄録

 近年、地域保健専門職が国際協力に従事する機会は増加しつつある。海外での地域保健活動においては、住民の生活の基本となる環境・文化背景や保健システムが大きく異なるため、活動を展開するにあたっては多くの困難が予想される。しかし、その「困難さ」の内容分析は個々の経験にとどまっており、充分とはいえない。本稿は国際地域保健活動遂行の阻害条件となりうる困難さの内容を分析することを目的に、以下のような方法で研究を進めた。
 研究対象者は平成9年7月から平成10年3月までに派遣された青年海外協力隊保健師隊員16名であり、活動期間2年間を追跡調査した。分析素材は派遣中5回の郵送による半構成質問紙で得られた質的データに含まれる「困難さ」に関する記載内容、各調査時期における主観的な語学習得レベル、健康状態である。
16名からの質問紙による返答から「困難さ」の内容は実に多様なものとして示されたが、「困難さ」に係る記述内容は赴任してからの時期によって変化が見られた。赴任直後から半年までは生活・文化適応面での「困難さ」に係る記述及び語学面での「困難さ」に係る記述が多く見られた。その後は協力活動を進める上での「困難さ」が中心的な課題となっていた。協力活動を進める「困難さ」の中には、活動を計画するために必要な情報の不足や、資金不足、雨季時の活動停止など活動時期の制限、アウトリーチ型活動への現地スタッフの抵抗感などに加え、適切なカウンターパートの選定や配属先の選定など、個人の努力では解決できない課題も多数含まれていた。
 地域国際保健活動を行う際には様々な内容の「困難さ」が存在する。「困難さ」の内容は非常に多様ではあるが、任地での生活を通じて自ら解決に向かうものと組織的に解決をはかる必要があるものとが混在する。限られた期間においてより効果的な協力活動を推進する上では、「困難さ」の内容をプロセスの中で整理し、可能な対策を講じることが必要である。

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© 2004 日本国際保健医療学会
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