国際保健医療
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活動報告
結核対策におけるフィリピンとの協力
遠藤 昌一
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2005 年 20 巻 2 号 p. 2_52-2_62

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抄録

世界保健機関(WHO)は1960年代以降、感染性患者(塗抹陽性)を発見し、完治させる結核診療を、国に広く配置された一般医療機関サービスに統合して実施することが社会の結核を減少させる最善の方策であること示し、加盟国にその採用を促した。その後強力な化学療法の開発に伴い、1990年に入りWHOは患者発見・治療の方法、それを支える運営上の条件を「DOTS戦略」(I.2.DOTS戦略の導入と展開参照)として定式化し、そして達成可能な目標を明確に示した。
フィリピンは1960年代後半にWHO勧告に従い、結核診療の一般医療機関活動への統合に成功したが、やはり対策の運営面で失敗した。(同様な失敗は他の多くの国でもみられた。)そのことを自覚して1980年代後半に日本政府に結核対策の強化への協力を要請してきたことで、国際協力事業団(JICA)による結核対策のための技術協力プロジェクトが開始された。このプロジェクトは開始以来15年間(1992-2007年)、新しい結核対策プログラムであるDOTS戦略の導入と全国的な展開に重要な貢献を果たした。この成功を可能にした要因としては、フィリピンにはプライマリーヘルスケアの基盤が整っていたことが最も重要であるが、その他JICAプロジェクトが他の国際援助機関との調整をリードしえたこと、国際的な対策の経験と研究実績を持つ結核研究所がプロジェクトに参画したこと、などが挙げられる。
一方、フィリピンでは中央政府および中間行政機関(圏域および州)の行政管理能力が弱く、その能力のさらなる強化が今後の対策の成否の鍵を握る。また存在する感染性結核患者の3分の1が私的医療機関で診療されていると考えられ、この部分の治療の成功にむけて最近公私の協調による努力が組織的に開始された。

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© 2005 日本国際保健医療学会
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