国際保健医療
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外国人の子どもの教育権-岐阜県可児市の事例から
小島 祥美
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2008 年 23 巻 1 号 p. 3-8

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抄録

 国籍を問わずすべての子どもの教育を受ける権利が認められている「児童(子ども)の権利条約」に日本も批准している。しかしながら日本で暮らす外国人の子どもは実際には就学が「恩恵的」な形でしか許可されておらず、国際基準となっている初等教育の教育機会が均等に保障されていない。このような背景から、外国人の子どもの就学と不就学の課題を考える際に最も基本的な資料である就学状況を明らかにした調査は、いまだ実施されていなかった。
 本研究では、外国人集住地域である岐阜県可児市をパイロット地域とし、可児市、可児市教育委員会、可児市国際交流協会、岐阜県等と協働し、パイロット地域に暮らす就学年齢期に相当する全国籍の外国人を対象に就学実態調査を2年間実施した。その結果、外国人の就学実態が全国で初めて明らかになった。また分析の結果、不就学をきたす理由等も明らかになった。とりわけ本調査は可児市から提供された外国人登録情報を基に実施したが、地域住民とコミュニティの協力により基本情報外の外国人住民の就学状況の把握も可能となった。つまり、文字通りに「すべて」の就学状況が明らかになったのである。その結果、調査中に把握した基本情報外の子どもは不就学である比率が高いこともわかった。
 可児市では調査結果を受け、可児市長は「不就学ゼロ」を掲げ、2005年度より不就学ゼロを目指した取り組み外国人児童生徒学習保障事業が開始した。同事業は、就学実態調査を実施する際に協働した行政・民間団体等が連携し、機能している。これら可児市の実践は、不就学ゼロを目指すモデル事業として、全国から視察者が絶えない。

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© 2008 日本国際保健医療学会
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