国際保健医療
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資料
西アフリカ仏語圏諸国の分娩介助に関わる人材の概要
松野 瑠衣森 淑江
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2016 年 31 巻 2 号 p. 123-136

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抄録
目的
  世界の中で高い妊産婦死亡率を示す西アフリカの国々では、熟練した分娩介助者(Skilled Birth Attendant;以下SBA)による分娩介助率向上のために国際的支援が盛んに行われている。しかし、それらの国々で、どの人材がSBAとされているか、また、実際の現場ではどの人材が分娩介助に関わっているかを記述した資料は少ない。本稿では西アフリカの仏語圏の国々を対象に、分娩介助に関わる人材とその概要、更にどの職種がSBAとされているかを明らかにする。
方法
  西アフリカ仏語圏の7カ国、ベナン、ブルキナファソ、コートジボワール、マリ、ニジェール、セネガル、トーゴの保健人材に関連する公的文書、各国の政府ホームページ等から得られる情報を基に文献レビューを行った。また、各国のSBAとされる職種については人口保健調査(Demographic and Health Survey;以下DHS)を参照した。
結果
  今回の対象国で分娩介助に関わっていたのは、看護師、助産師、准看護師、准助産師、医療補助員、産科看護師、基礎医療者、マトロン、コミュニティヘルスワーカー、伝統的産婆だったが、同じ国の政府が発行する複数の文書で保健人材の職種名称や定義が異なっていた。DHSでは、看護師、助産師は各国でSBAと見なされ、その他の職種の扱いは国により異なった。WHOの保健人材分類による看護・助産職はSBAに含まれるが、コミュニティヘルスワーカーはSBAには含まれない国が多かった。例外的にブルキナファソとマリでは、コミュニティヘルスワーカーの一種であるマトロンもSBAとされていた。
結論
  いずれの国も政府が発行する文書でどの職種がSBAであるかを明確に示していなかった。当該国においては、SBAの定義が喫緊の課題であると同時に、保健人材制度の整備とそれを文書に反映していくための管理システム構築の重要性が確認された。また、妊産婦死亡率の削減に向けて行われているSBAに関する様々な政策支援が、各国においてどの人材がSBAとされているか明らかでないままに行われている可能性が示唆された。当該分野への政策支援事業においては、保健人材について十分に把握し、的確な人材選択と介入方法を熟慮した支援計画立案が必要であることが再確認された。
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© 2016 日本国際保健医療学会
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