国際保健医療
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日本の大学に在籍する外国人留学生の保健行動と関連要因に関するパイロットスタディ
小寺 さやか上谷 真由美中島 英千場 直美
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2018 年 33 巻 4 号 p. 325-336

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抄録

目的:本研究は、日本の大学に在籍する外国人留学生の保健行動(健康行動及び受診行動)とその関連要因を明らかにすることを目的とした。

方法:A県内の一国立大学に在籍する外国人留学生274人に、留学生センター等において直接または指導教員を介して研究協力依頼文書を配布した。データ収集には、ウェブサイトを用いた無記名による自記式質問紙調査(英語又は日本語)を用いた。調査内容は、基本属性(出身国、滞在期間、日本語習熟度等)、経済状況(経済的不安、奨学金の有無等)、ソーシャルサポート、健康行動と受診行動の実施状況、ヘルスリテラシー(HLS-EU-Q16)等であった。病気やけがの際に「病院や診療所に行った」経験を持つ者又はその意思を持つ者を受診行動あり群とした。各項目と健康行動合計得点及び受診行動の有無との関連について二変量解析を行った。

結果:調査回答者は70人で(回収率25.5%)、すべてを分析対象とした。対象者の平均年齢は25.0±4.1歳、出身国は中国が44.3%(31人)で最も多く、滞在期間は「1年以上5年未満」が54.3%(38人)と約半数を占めた。経済的に不安がある者は50.0%(35人)、相談できる日本人友人の数は「5人未満」が40.0%(28人)で最も多かった。健康行動合計得点と関連が見られた項目は、相談できる日本人友人の数であった(p=0.026)。受診行動あり群は41人(58.6%)で、受診行動の有無と関連が見られた項目は、滞在期間のみであった(p=0.034)。また、健康行動及び受診行動ともに経済不安、ヘルスリテラシーとは有意な関連を認めなかった。

結論:日本の大学に在籍する外国人留学生の保健行動の関連要因として、相談できる日本人友人の数及び滞在期間が明らかとなった。ヘルスリテラシーとは関連が認められなかったことから、本来有しているヘルスリテラシーが日本で活かされていない可能性がある。外国人留学生に望ましい保健行動を促すためには、外国人留学生と日本人学生との交流の機会を増やすこと、早期に外国人留学生が日本の保健医療システムについて学ぶ機会を提供すること等が有効である可能性が示唆された。

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© 2018 日本国際保健医療学会
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