国際保健医療
Online ISSN : 2436-7559
Print ISSN : 0917-6543
原著
タイ東北部ナコンラチャシマ県中心部における要介護高齢者を抱える家族介護者の介護負担感に影響を与える因子の検討
渡辺 長ジラポン チョンピクン河森 正人ヌアンパン ピムピサンサウィトリ ヴィサヌヨウティン
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2019 年 34 巻 4 号 p. 217-228

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抄録

目的

  タイでは高齢者人口の増加により人口動態が変移している。タイの要介護高齢者を抱える家族介護者は介護に要する知識、技術、社会資源が不足する中、要介護高齢者が必要とする幅広い介護を提供する責任を負っている。そのため、生活習慣病を起因とする慢性疾患増加に伴う長期に及ぶ介護では相当なストレスに晒されることになる。本研究の目的はタイ東北部で要介護高齢者の介護に携わる家族介護者間で介護負担感が高い介護者の割合を特定し、それに影響をもたらす要因を特定した上で、介護負担軽減に向けた施策を提言することである。

方法

  2017年8月にタイで高齢者人口が最大のナコンラチャシマ県ムアング群(32地区)より無作為に選択された10地区より314名の家族介護者を選定し、Caregiver Burden Inventory (CBI)を用いて介護負担感の評価を行った。介護負担感に関連する要因分析にはカイ二乗検定及び多重ロジスティック回帰分析を使用した。またCBIを構成する5つの要因間における分析には一元配置分散分析を使用した。

結果

  介護負担感が高い家族介護者の割合は中程度(41.7%)であった。CBIを構成する5つ要因分析では「時間的制約」が有意に高く介護負担感の主な要因であった。また多重ロジスティック回帰分析による高介護負担感に有意に関連する因子として、介護者の健康問題(adjusted odds ratio (AOR) = 3.60, 95% confidence interval (CI) = 2.06-6.27)、介護者の睡眠の質の悪化(AOR = 2.71、95% CI = 1.43-5.11)、一日8時間以上の介護提供 (AOR = 2.81、95%CI = 1.61〜4.91)、要介護者のADLレベルの低下(AOR = 3.98、95% CI = 2.29-6.92)、要介護者の認知レベルの低さ (AOR = 2.12、95% CI = 1.23-3.67)が明らかとなった。

結論

  介護負担感が高い家族介護者の割合は中程度でありCBIを構成する5つの指標のうち「時間的制約」が有意に高かった。介護者の介護負担感に影響を与える主な要因としては、介護者の健康上の問題、介護者の睡眠の質の悪化、1日8時間以上の介護提供、要介護者の低いADLレベル、要介護者の認知レベルの低下であり、介護者と要介護者の双方の要因が関連していることが判明した。

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© 2019 日本国際保健医療学会
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