2022 年 37 巻 1 号 p. 25-33
目的
本研究は、本誌に掲載した「在日ブラジル人妊産褥婦の健康に影響する社会文化的要因」で収集したデータの未分析分を用いて、ブラジル人妊産褥婦の社会関係と心身の健康状態に関わる援助探索行動を明らかにすることを目的とした。
方法
研究対象は、A県とB県に在住する20歳以上のブラジル人妊産褥婦で、対象者の自宅で半構成的インタビューを行った。インタビューガイドは、Arnaultが開発したヘルプシーキングの文化的要因理論(The Cultural Determinants of Help Seeking)を基にした日本語版を用いた。データ収集期間は2013年~2014年で、分析的エスノグラフィーを用いてコアテーマを抽出した。
結果
対象者は18人で、平均年齢は32.4歳で、20代が5人、30代が13人であった。平均滞在期間は12.6年で、10年未満が6人、10年以上が12人であった。在留資格は、永住者が12人であった。社会関係では、【限られた交流】【家族と信頼できる人が頼り】の2つのコアテーマが、また心身の健康状態に関わる援助探索行動では、【身近なインフォーマル資源への信頼】【自己解決への模索】の2つのコアテーマが抽出された。
結論
日本で生活するブラジル人妊産褥婦の社会関係や援助探索行動は、デカセギ労働での夢と現実が引き起こすトランスナショナルな生活の中で培われた人間関係の持ち方と、ブラジル人に特徴的な家族の在り方や宗教、自助の積み重ねによる問題解決行動などが影響していると考えられた。