国際保健医療
Online ISSN : 2436-7559
Print ISSN : 0917-6543
37 巻, 1 号
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原著
  • 堀本 知春, 上杉 裕子
    2022 年37 巻1 号 p. 1-9
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/12
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    目的

      我が国では入国管理法の改定等により在留ベトナム人技能実習生が年々増加しているが、彼らの健康課題や医療受診に焦点を当てた研究は少ない。本研究の目的は在留ベトナム人技能実習生の来日後の医療受診における困難を明らかにすることとした。

    方法

      関西圏に在住するベトナム人技能実習生12人〔男性8人(66.6%)、女性4人(33.4%):平均年齢26.3歳、平均滞在期間:2年3か月〕に来日後の医療受診における困難について半構造化インタビューを実施し、質的記述的に分析を行った。

    結果および考察

      受診における困難として、『症状が悪くなってからでないと受診しない』、『会社や監理団体のサポートがないと受診ができない』、『疑問や不満があっても確かめることができない』、『仕事や同行者の都合を優先させ受診を控えてしまう』という4つのカテゴリーが得られた。ベトナム人技能実習生にとって職場や監理団体による医療受診時のサポートは、日本で医療サービスを受けるために重要な存在であった。また、『疑問や不満があっても確かめることができない』ことから医療従事者は彼らが医療機関を受診した際に、職場や監理団体の職員に説明を行うだけではなく、彼ら自身に疑問がないかを聞くなど積極的に関わっていく必要がある。

    結論

      在留ベトナム人技能実習生の医療受診において、所属する職場や監理団体の支援が彼らの医療サービスを受ける際の重要な役割を果たしていた。今後は、それらの支援のみならず産業保健分野や地域医療機関との連携も必要である。

  • 佐藤 沙紀, 杉本 敬子
    2022 年37 巻1 号 p. 11-24
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/12
    ジャーナル フリー

    目的

      日本語を母語としない外国人妊産婦とのコミュニケーションにおける助産師の経験を経時的に記述することにより、妊娠期から産褥期特有の課題について明らかにすること。

    方法

      外国人妊産婦に対するケアの経験のある臨床助産師5名を対象に、質的記述的研究を行った。

    結果

      妊娠期においては«妊娠期に医療的な説明を行う時には正確な情報伝達を行いたい»«妊娠期の保健指導時では指導内容によって必要な手段が異なる»«妊婦健診の診察での行動の促しは言語的手段があると関わりやすい»«分娩開始兆候についての電話連絡では言語的コミュニケーションがとれないと困難感がある»の4つのカテゴリー、分娩期においては«適切な手段やそれまでの産婦への継続的な関わりによって分娩進行中のやり取りが円滑になる»«分娩期のケアを行う際には非言語的手段が有用である»«母児の生命に危険が及んでいる時は産婦の理解力や適切な伝達手段の選択がコミュニケーションに重要である»«分娩直後の処置の際に痛みの表現が大きいと言語の違いがある中での関わりに難しさを感じる»«分娩直後は言語的に意思疎通ができないと関わりの難しさを感じる場面がある»の5つのカテゴリー、産褥期においては«産褥期の保健指導では非言語的手段で行うことができる場面がある»«産褥期に医療的な説明をする際は言語的手段があれば困らない»«産褥期における電話連絡では自身の言語能力で対応する必要があり意思疎通が難しい»«産褥健診では言語的な意思疎通ができないことで十分な関わりができない無力感に繋がる»の4つのカテゴリー、妊娠期から産褥期全体の関わりとして«言葉や文化の違いがある中でもより質の高いコミュニケーションを行いたい»という1つのカテゴリーが抽出された。

    結論

      妊娠期・分娩期・産褥期のそれぞれの場面において、医療通訳などの正確な情報伝達が可能な言語的手段を用いてコミュニケーションがとれるような環境整備や、文化を尊重するケアの実現や助産師と外国人妊産婦とのより良い信頼関係の構築のための助産師の異文化対応能力の向上に向けた教育を行う必要性が示唆された。

研究報告
  • 畑下 博世, 鈴木 ひとみ, 河田 志帆, 水谷 真由美, 西井 崇之, 近藤 純子, Denise M. Saint Arnault
    2022 年37 巻1 号 p. 25-33
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/12
    ジャーナル フリー

    目的

      本研究は、本誌に掲載した「在日ブラジル人妊産褥婦の健康に影響する社会文化的要因」で収集したデータの未分析分を用いて、ブラジル人妊産褥婦の社会関係と心身の健康状態に関わる援助探索行動を明らかにすることを目的とした。

    方法

      研究対象は、A県とB県に在住する20歳以上のブラジル人妊産褥婦で、対象者の自宅で半構成的インタビューを行った。インタビューガイドは、Arnaultが開発したヘルプシーキングの文化的要因理論(The Cultural Determinants of Help Seeking)を基にした日本語版を用いた。データ収集期間は2013年~2014年で、分析的エスノグラフィーを用いてコアテーマを抽出した。

    結果

      対象者は18人で、平均年齢は32.4歳で、20代が5人、30代が13人であった。平均滞在期間は12.6年で、10年未満が6人、10年以上が12人であった。在留資格は、永住者が12人であった。社会関係では、【限られた交流】【家族と信頼できる人が頼り】の2つのコアテーマが、また心身の健康状態に関わる援助探索行動では、【身近なインフォーマル資源への信頼】【自己解決への模索】の2つのコアテーマが抽出された。

    結論

      日本で生活するブラジル人妊産褥婦の社会関係や援助探索行動は、デカセギ労働での夢と現実が引き起こすトランスナショナルな生活の中で培われた人間関係の持ち方と、ブラジル人に特徴的な家族の在り方や宗教、自助の積み重ねによる問題解決行動などが影響していると考えられた。

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[委員会報告]「移民の健康」委員会キックオフシンポジウム
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