国際保健医療
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持続的なトラコーマ対策で実施された教育的介入の要素の抽出
寺下 菜々子中野 久美子大森 純子
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2022 年 37 巻 2 号 p. 77-86

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抄録

目的

  トラコーマの予防プログラムにおける教育的介入についての具体的な実施内容を整理し、教育的介入の要素を明らかにした。

方法

  PubMedのデータベースにて本文中にTrachoma、intervention、education、SAFE、hygiene、WASH、sustainability、sustainable、eliminationのキーワードが含まれるトラコーマ予防を目的とする介入研究の文献を抽出した。抽出文献を熟読し、介入内容ごとにJICA国際協力機構が用いるDAC評価5項目のうちのsustainability(自立発展性)が定める分析の視点を用いて持続性について分類・整理し、持続性のあるプログラムの教育的介入についての要素を抽出した。

結果

  検索の結果、22件の英文文献が抽出された。この内、除外基準をもとに精選した原著論文10件を対象とした。分析の結果、教育的介入の要素として、【学童期やコミュニティにおける教育】、【ソフト面、ハード面の支援】、【トイレの建設指導】、【設備や資源の利用方法の指導】、【知識や技能伝授の活動の継続】の主要5項目が抽出された。

考察

  学校衛生教育による学童の衛生行動の習慣化や、家庭の衛生状態の改善などの介入を行うこと、トイレの建設のみならず住民主体でトイレの管理・維持方法を指導する意義が示唆された。一方で、学校衛生教育が受けられない未就学の子どもや、清潔な水の入手困難地域といった、トラコーマ対策から取り残されたグループの存在がトラコーマの撲滅を困難にしている。

結語

  本研究では、持続性を有するトラコーマ予防対策で重要と考えられる教育的介入の要素を明らかにした。水と衛生サービスが依然として低水準であるアフリカを始めとした開発途上国を取り残さないために、衛生水準の向上を含む包括的支援の継続が望まれる。

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© 2022 日本国際保健医療学会
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