2020年、世界的な新型コロナウイルス感染拡大に対して、異例のスピードで「新型コロナウイルス感染症のワクチン(以下、新型コロナワクチン)」の開発が進んだ。そして、2021年、高所得国を中心に、高いワクチン接種率を達成した。その一方で、低/中所得国におけるワクチン接種率は、2022年1月時点でも低く、世界のワクチン格差が浮き彫りになっている。
新型コロナワクチンを世界全体に公平に供給する国際的な枠組みであるCOVAXファシリティに関して、本稿ではそのワクチン供給の仕組みを説明するとともに、①COVAXファシリティを通じた供給とワクチン寄付・供与をめぐる課題、②太平洋島嶼国を事例としたワクチン供給、③太平洋島嶼国の脆弱性に焦点を当て、ドナー国からのワクチン支援のあり方に関して論じる。
COVAXファシリティという枠組みによって、2021年2月に低/中所得国でのワクチン供給が開始され、また高所得国が買い占めたワクチンの寄付が実現できた。しかしながら、ワクチン供給の「公平性」は実現できたとは言い難い状況となっている。
太平洋島嶼国14か国の間でもワクチン格差が存在する。太平洋島嶼国は、国土の拡散性・狭隘性・離散性および国際市場からの遠隔性といった共通の課題を抱える。ワクチン接種率が高い国では、2国間援助やワクチン寄付等により、必要十分なワクチンが供給され、ほぼ対象年齢全員にワクチン接種が完了している、もしくは2022年内に完了予定である。しかしながら、キリバス、ソロモン諸島、バヌアツといったワクチン供給が十分であっても、効果的にワクチン接種に結びついていない国では、ワクチン損失が多く起こっている可能性がある。さらに、パプアニューギニアのように、基本的な保健医療水準が低い国では、健康危機における短期的に大規模な保健医療支援が行われたとしても、ワクチン接種向上に結びつかない可能性もある。
新型コロナウイルス感染症が流行して、2年以上が経過しようとしている。今後、ワクチン接種の向上を目指すには、供給支援から、ワクチン接種体制や基本的な保健医療サービス支援等も含めた中長期的な支援にシフトしていく必要がある。
Introduction
The number of Japanese working in developing countries is increasing, and it is critical to understand more clearly their perceived travel risks and ensuing behaviors. Therefore, the purpose of this study was to investigate health risk perception, health behavior, and disease prevention among Japanese overseas workers who had lived in low and middle-income countries.
Methods
A qualitative descriptive design was used. A purposive sample of Japanese (N = 8; [3 men; 5 women]) experienced in sponsored overseas volunteer work were interviewed.
Results
Three categories emerged from the content analysis of health risk perceptions: pre-overseas travel concerns, increased awareness of travel-related risks, and desire to avoid injury or illness. The related health behaviors and disease preventions were: pre-departure preparatory steps for preventive actions, preventive efforts against injury and illness using available resources, finding a safe hospital, and treatment of health problems. Their health behaviors reflected the extent of activities they had to undertake to protect health when they had limited knowledge of and access to the country’s resources. In the absence of continuous health advice from reliable sources, past experience became important.
Conclusions
The health risk perceptions of the overseas worker were informed by their past experience and from pre-departure advice, which in turn influenced their pre-departure preparation. Pre-departure and in-country advice could be very important to support the efforts of overseas workers to avoid injury or illness.
目的
トラコーマの予防プログラムにおける教育的介入についての具体的な実施内容を整理し、教育的介入の要素を明らかにした。
方法
PubMedのデータベースにて本文中にTrachoma、intervention、education、SAFE、hygiene、WASH、sustainability、sustainable、eliminationのキーワードが含まれるトラコーマ予防を目的とする介入研究の文献を抽出した。抽出文献を熟読し、介入内容ごとにJICA国際協力機構が用いるDAC評価5項目のうちのsustainability(自立発展性)が定める分析の視点を用いて持続性について分類・整理し、持続性のあるプログラムの教育的介入についての要素を抽出した。
結果
検索の結果、22件の英文文献が抽出された。この内、除外基準をもとに精選した原著論文10件を対象とした。分析の結果、教育的介入の要素として、【学童期やコミュニティにおける教育】、【ソフト面、ハード面の支援】、【トイレの建設指導】、【設備や資源の利用方法の指導】、【知識や技能伝授の活動の継続】の主要5項目が抽出された。
考察
学校衛生教育による学童の衛生行動の習慣化や、家庭の衛生状態の改善などの介入を行うこと、トイレの建設のみならず住民主体でトイレの管理・維持方法を指導する意義が示唆された。一方で、学校衛生教育が受けられない未就学の子どもや、清潔な水の入手困難地域といった、トラコーマ対策から取り残されたグループの存在がトラコーマの撲滅を困難にしている。
結語
本研究では、持続性を有するトラコーマ予防対策で重要と考えられる教育的介入の要素を明らかにした。水と衛生サービスが依然として低水準であるアフリカを始めとした開発途上国を取り残さないために、衛生水準の向上を含む包括的支援の継続が望まれる。