国際保健医療
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日本におけるイスラム教患者へのケアに関するキーインフォーマント調査
戸田 登美子中村 安秀牧本 清子
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2024 年 39 巻 3 号 p. 73-89

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抄録

背景

  日本で医療を必要とする外国人観光客及び在留外国人は増加傾向にあるが、イスラム教患者をケアする日本の医療従事者の経験についてはほとんど明らかとなっていない。

目的

  本研究は、日本の医療機関で働く医療従事者のイスラム教患者へのケアにおける経験やアプローチについて精査し、イスラム教患者へ文化的に適切なケアを提供するための医療従事者の知識や態度を明らかにすることを目的とした。

方法

  外国人患者のケアに携わった経験のある医療従事者にインタビューを行い、キーインフォーマント調査を実施した。インタビューデータの分析には内容分析を用いた。

結果

  合計292のコードが抽出され、18のサブカテゴリー、5つのカテゴリーが同定された。4つのカテゴリーは、イスラムの文化的・宗教的知識とこれらの問題への対処法、特にハラールとラマダンの断食への対処法を含む異文化対応能力が示され、1つのカテゴリーは組織的支援の必要性に関するものであった。キーインフォーマントは、イスラム教患者のケアに関する専門的な知識と技術を有していた。今回の知見は、ハラールや断食等、宗教的な医療が患者にもたらす影響に関してエビデンスに基づく医療を提供する必要性を明らかにした。

結論

  本研究により、参加者はイスラム教患者に対して文化的な知識と態度を示している一方、宗教に配慮した医療が患者に与える影響に関して根拠に基づく実践を展開するには、さらなる調査の必要性が明らかとなった。

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© 2024 日本国際保健医療学会
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