2011 年 13 巻 3 号 p. A20-A29
観光立国の理念は、観光の機会享受をすべての人に開かれたものとして掲げている。観光の機会を享受するとは現代社会においてどのような意味を持つのだろうか。観光が人びとの生活を構成する重要な要素であるとすれば、観光が消費活動を基軸にして展開される現実の状況にあっても、その領域から排除され周縁化される人びとの存在を無視することはできない。本稿では、消費としての枠組みからの発想の転換を求め、個々人の観光の享受を権利の視点から検討し、現段階を海外の動向をも視野に入れつつ「権利化」のプロセスの展開過程として位置づけることによって、障害者だけでなくすべての国民に開かれた真の意味でのバリアフリー化への道筋とその実現のための社会的方策を検討しようとする。