社会言語科学
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「あいさつ」における言語運用上の待遇関係把握(<特集>敬語研究のフロンティア)
中西 太郎
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2008 年 11 巻 1 号 p. 76-90

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抄録
本研究では,人が人に出会ったときにどのような行動をするか,その実態をもとに,出会い時のあるメッセージが待遇的にどんな働きをしているかを明らかにすることと,そのメッセージが表し分ける人間関係,言語運用上の待遇関係把握がいかなるものか,を明らかにすることを目的とする.したがって,本稿で対象とするのは,従来の研究で主に扱われてきたあいさつ言葉を含む,総体としての出会い時の表現(本稿では,これを「」付きで「あいさつ」と表現する)である.本研究では,日記調査法を用いて,「出会いのあいさつ」の実証的なデータを収集した.荻野の数量化に基づく分析の結果,「あいさつ」としての各表現が,丁寧度の軸に沿って詳細に位置づけられた.また,「あいさつ」による聞き手の位置づけは敬語による聞き手の位置づけとほぼ同じになることがわかった.つまり「あいさつ」と敬語の待遇関係表示の機能はほぼ同じであるといえる.加えて,「あいさつ」においては文末敬語形式に加えて,「オハヨウ」か「オツカレ」か,といった表現形式の使い分けも待遇関係表示の機能にとって重要だということを明らかにした.それを踏まえ,従来のあいさつ論の観点では説明し得ない,近年のあいさつの運用実態の変化について,荻野値にもとづいた待遇的観点で説明を与え,その有用性を示した.
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© 2008 社会言語科学会
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