社会言語科学
Online ISSN : 2189-7239
Print ISSN : 1344-3909
ISSN-L : 1344-3909
「文脈ニーズの察知」による待遇表現 : 「文脈スキャニング仮設」(<特集>敬語研究のフロンティア)
遠藤 直子
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 11 巻 1 号 p. 91-102

詳細
抄録
日本語教育において,〜タホウガイイや〜テクダサイなどの「行動展開表現」は,個々の表現の文脈に見られるコミュニケーションの「受け手」のニーズを考慮に入れて組み立てられなければならない.本稿では,上述したタイプの「行動展開表現」を中心に,日本語の待遇表現教育における「文脈ニーズの察知」の必要性について議論する.「文脈ニーズの察知」とは,「受け手」にとって,あるいは「受け手」に対して,今,何が必要か」ということを発話時点で話し手が素早く察知することである.「文脈ニーズの察知」がどのように行われているかという点については「文脈スキャニング」という行為を通して行われていると仮定する.「文脈スキャニング」とは,話し手が「受け手」に遭遇した際に,コミュニケーション活動をどのように構築していくかを決定するために行うものである.また,この行為を通して得る「文脈ニーズ」は,「受け手」をどのように待遇するかということを決定する要素である「参照情報」とともに,円滑なコミュニケーションを実現する上で非常に重要であると考える.「文脈ニーズ」「参照情報」については第3章で,「文脈スキャニング」については第4章で,これらの仮説について詳しく述べる.
著者関連情報
© 2008 社会言語科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top