社会言語科学
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研究論文
文字の消費時間の推移と文字消費に関するタイポロジー―「日本人の情報行動調査」から―
橋元 良明
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2017 年 20 巻 1 号 p. 5-15

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抄録

本稿では,筆者が中心となって5年ごとに実施してきた「日本人の情報行動調査」のデータから,文字消費量の推移をたどり,文字消費に関わるタイプ分けを行ってそれぞれの特徴を分析する.

1995年以降,新聞,雑誌,書籍の活字の閲読時間は全年齢層で減少し続けている.一方,ネット上でのメールやソーシャルメディアの利用時間は増加を続けており,前者と後者の時間量は10代20代においては2005年で逆転した.2015年調査のデータでは,活字と電子文字を合わせた文字の消費時間の総計は20代が年齢層別にみて最も多く,現代の若者の文字の消費量は,有史以来,最高のレベルにあると言っても過言ではない.

活字の閲読時間と電子文字の消費時間からクラスター分析を行い,活字タイプと電子文字タイプ,中庸(平均)タイプの3タイプを析出した.活字タイプ,電子文字タイプは男性比率が高く,未婚率が高い傾向が見られ,活字タイプは社会的階層が高いという自己認識をもっていた.また,活字タイプは政治関心が高く,政治的有効性感覚も高かった.中庸タイプはメール,ソーシャルメディア,新聞閲読において平均的であり,社会階層の自己認識も「中の中」が多かった.「いつもやらなければならないことに追われているように感じる」という感覚をたずねた「タスク・オブセッション」については,活字タイプで低く,電子文字タイプ,中庸タイプにおいてともに高かった.

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