2019 年 22 巻 1 号 p. 203-218
本研究はロシアの大学生を対象に,彼らの動機づけを検証・分析したものである.本稿では自律性指標を設定することで,彼らの動機づけが内発的か否かを検証している.動機づけの方向性に関しては,課題価値評定尺度を用い,彼らがどのような動機づけ構造を有しているかを把握した.また,調査対象者を日本語を活かした仕事を第一志望とする日職種群と,それ以外の職種を視野に入れた他職種群に分け,彼らの自律性指標や課題価値の差,及びその関連の相違を分析した.分析の結果,日職種群においては,学習活動が手段的である利用価値にも自律性指標との関連が見られた.これはこの動機づけが外側からのみの刺激によるものではないことを示唆している.一方他職種群においては公的獲得価値が機能することが示唆された.このことから後者の群には社会的価値観に近づける教室活動が期待されるのではないかと考えられる.