本論文では,戦後の言語政策において「公用文のわかりやすさ」がどのように扱われてきたかを分析した.指摘したことは以下の4点である.1点目,公用文は規定上職員や関係者などへの内部向け文書が想定されてきた.2点目,日本の言語政策の歴史は,文字・表記の規範化のために多大な労力をかけてきたため,文章の内容に踏み込んだ議論が深くはなされていない.3点目,語句レベルの言い換え提案はいくつかなされてきているが,談話レベルに踏み込んだものはまだない.4点目,談話レベルのわかりやすさとは,相手への配慮(美しい言葉,丁寧な言葉)や行き届いた叙述などと両立が難しい.こういったわかりやすさの分析がこれまでの言語政策では見過ごされてきた可能性がある.これらを踏まえて,以下の提案を行った.
①公用文の定義において部外用文書と部内用文書に分ける
②内容に関する談話レベルの解決策を提案する
③わかりやすさの阻害要因を抽出し整理する