社会言語科学
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展望論文
日本のインバウンド観光施策における言語政策の展開と展望―多言語化の進展を意識化する―
山川 和彦
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2019 年 22 巻 1 号 p. 17-27

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抄録

今日の訪日外国人旅行者の増加に起因する観光事象は,2003年の小泉元首相による観光立国宣言にはじまり,現在は,国外における誘致活動と国内における外国人旅行者の受入整備が加速している状況にある.観光施策の一つが多言語対応で,これは観光の枠組みのなかとはいえ明確な言語計画をともなう.ユニバーサルデザインのもと英語を優先し,他の言語は利便性のための提供というヒエラルヒーが示されている.また,外国人材,自動音声翻訳装置の活用も重要な政策である.富裕層を中心とした滞在期間の伸長が計画され,観光業界における外国人の雇用も進展していることから,観光客の行動領域が日本人の生活領域に連続することになる.このような施策の進展の中で,日本人の多言語教育は観光分野においては取り上げられていない.観光先進国としてさらなる発展が計画されるのであれば,表面的な翻訳だけではなく,言語権まで意識した言語政策が必要である.

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© 2019 社会言語科学会
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