本稿は,節境界を手掛かりとしてあいづちの出現環境について分析,考察を行ったものである.分析の結果,東京の会話では絶対的な境界を示す文末系のところで,大阪では絶対的な境界ではない接続詞系のところであいづちが出現しやすいことが明らかとなった.さらに,節境界以外で出現したあいづちの分析では,2地域の結果に違いが見られた.これらの分析結果を踏まえ,2地域の会話及びあいづちを特徴づけると次のようになる.大阪では,聞き手が会話に絡んできやすい状況を話し手が作り出したり,聞き手に話の続きを推測させたりして,会話参加者同士が相互行為を楽しみながら会話を行う傾向が見られ,あいづちは話し手の調子に合わせてうたれているように見える.つまり,話し手主体のあいづちであると考えられる.一方,東京では話し手が発話権の保持や情報の不確定さを示しながら会話を進める話し手主体の傾向が強く,あいづちは聞き手が話の内容を把握した時点で現れているように見える.よって,聞き手主体のあいづちであると言える.