本稿では,フィラー的形式の「まあ」について,日常会話の様々な行為連鎖環境における相互行為上の働きを会話分析的視点から分析する.「まあ」は,話者が,今ここの相互行為における何らかの出来事を問題性を孕むものとして捉え,その問題への対処あるいは対処の結果として現行の行為を産出しているというスタンスを標示することを明らかにする.ターン冒頭に用いられる場合は,先行状況や先行発話に何らかの問題を見出しそれに対処した結果としての行為を産出しているというスタンス,また,ターンの内部で用いられる際には,自身の直前の発話部分に問題性を捉え,それに対処する発話を導入したり,一般的期待から逸脱するような発話を産出する際の問題性の認識を標示する.このように,「まあ」は,進行中の相互行為のある部分を対象化し,問題性を孕むものとして捉えた上で後続行為を産出することを標示するという意味において「メタ相互行為的」な標識であることを明らかにする.