自然災害で被災した地域では,被災者を励まし鼓舞するために,その地域の方言を使ったメッセージを掲げることがある.このような方言の活用は「方言エール」「方言スローガン」と呼ばれている.2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震の被災地では,「けっぱれ!岩手」「がんばるけん!熊本」といった方言エールが被災地域に掲げられていた(井上ほか,2013;茂木,2019).2020年に始まったコロナ禍でも,方言を用いた「エール」や「スローガン」が見られるが,過去の二つの震災で見られた類型とは異なるものが見られた.そこで,東日本大震災と熊本地震の後とコロナ禍で見られた方言エールや方言スローガンの共通点と相違点を調査・分析し,方言部分の意味から「エール」と「スローガン」を区別するのが適切であると結論づけた.