新型コロナウイルス感染症の世界的流行は,大学生の日常における諸活動をオンライン上へと移行させた.本稿は,人々が生活様式の大きな変更を迫られていた2020年2月~6月頃をコロナ禍初期と捉え,この時期の大学生たちによるオンライン雑談会話のデータを提示する.画面とウェブカメラを介したコミュニケーションであるオンライン会話の特徴として,対面とは異なる視野の範囲と,それに応じた見ること/映ることをめぐる参加者の言語・非言語的振る舞いが挙げられる.本稿では,(1)画面を通した相手や相手の空間への視覚的アクセスと,(2)ウェブカメラに映ることの選択と映り方の調整をめぐる相互行為に着目し,他者との「つながり(bonding)」(Ide & Hata, 2020)が生み出される方法を分析した.その結果,(1)では,相手の空間に対する言及のなかで出現する共同注視や声の共鳴が一体感を生んでいることと,そうした言及を通して相互行為の場の拡張がなされていることが観察された.また(2)では,ウェブカメラへの映り方を調整・評価する相互行為によってオンライン会話のコミュニケーション規範が共有/確認され,参加者の社会的連帯が強化されることが示された.分析より,オンライン会話における身体・相互行為・社会文化レベルでの多様なつながりが,視覚的なコミュニケーション資源の利用を通じて創発される具体的な方法が明らかになった.
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