2022 年 25 巻 1 号 p. 24-38
2020年度初頭に始まった新型コロナウイルス感染症の影響により,多くの大学でオンライン授業に切り替わり,日本へ留学予定だった学生もオンラインで「留学」することとなった.コロナ禍以前から日本語教育において海外と国内の学習者をつなぐ遠隔交流授業が行われており,多くの実践報告や研究がなされてきた.本稿では,これまでの遠隔授業の成果と意義を概観した上で,オンラインにおいても学習者がコミュニティに参加できる「場」が重要であることを論じた.さらに,日本の大学に留学した学習者3名にインタビューを行い,彼らが何を求めて留学し,2020年の学びをどう評価しているのか彼らの語りから検証した.その結果,日本の生活を体験することが留学の目的であったこと,教育の成果は評価しているものの,人間関係の構築やコミュティへの参加は困難であると感じていたことが明らかとなった.オンラインによる授業・交流が多様なコミュニティを形成する場の一つとして最大限に活用されるためには,コミュニティ参加を促す仕組みを組み込むことが重要であることを述べた.