社会言語科学
Online ISSN : 2189-7239
Print ISSN : 1344-3909
ISSN-L : 1344-3909
展望論文
社会言語学研究における多様性と包摂性
平本 美恵
著者情報
ジャーナル フリー

2025 年 28 巻 1 号 p. 5-15

詳細
抄録

この論文は,学術界における多様性・公平性・包摂(DEI)の取り組みについて焦点的なレビューを提供する.DEI運動の起源は1960年代の公民権運動にさかのぼる.この運動は,特にアメリカ南部の教育機関において制度改革を促進させた.当初は人種や民族の多様性に焦点が当てられていたが,DEIの取り組みは世界的に拡大し,大学や教育機関の政策と統治に影響を与えている.例えば多くの教育機関がDEI推進の専門部署を設けることは,インクルーシブな環境づくりにおいて重要な役割を果たすと強調している.さらにDEI推進の専門部署設置は,大学や教育機関のカリキュラムが地域社会との連携に役立ち,それによる多文化的な視点が取り入れられる意義も強調している.こうした取り組みは,キャンパス内にとどまらず,地域社会へと広がる持続可能な関係性を構築し,高等教育における社会的公正を実現するための現代的なアプローチを示している.歴史的背景と現在の実践例を統合的に捉えることで,世界各地の教育現場においてDEIがどのように進展してきたか,また現在どのような意味を持つのかについて,より深く理解することができる.このような内容を含め,本論文は,社会文化言語学の視点から,学術界における社会的(不)正義に関する研究を北米の事例を中心に検討する.

著者関連情報
© 2025 社会言語科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top