本研究は,全国的にも早い段階で手話を導入した三重聾学校の手話導入の前後期に焦点を当て,聾学校における言語をめぐるコミュニティの実践を正統的周辺参加論から分析した.聾学校の子ども達は手話を禁止されながらも,既存の手話コミュニティへの参加を通して,手話を身につけていった.また,当時聾学校で行われていた口話教育においては,聞こえない子ども達は周辺参加にとどまりながらも,独自の参加の方略を見出しながら,口話能力を自己評価として学習していった.聾学校外部の手話コミュニティの広がりの中で,外からやってきた手話コミュニティの教師らが,聾学校内部にあった既存の手話コミュニティを顕在化させ,拡大していき,手話を取り入れる実践を行っていった.口話教育の実践コミュニティの減退とともに,三重聾学校全体で手話が認められた.これらのことは,コミュニティへの参加のあり方が言語習得や特定の教育実践を規定しており,学習を参加とみる視点の欠如が,手話を排除する口話教育を長く継続させていたことを示唆するものである.