2025 年 28 巻 1 号 p. 63-78
自閉症者と定型発達者に発生する葛藤は,通常自閉症者のコミュニケーション障がいに原因帰属される.だがそれをディスコミュニケーション論の視点から分析すれば,異なる特性から生まれた異なる体験世界が,他者との相互行為の規範にズレを生み,関係調整が破綻することで双方が苦しむ状態として理解可能になる.語用論の視点からも両者で発話の適切さの基準にズレがあるとすれば,定型的な語用の在り方と異質さを持つ自閉的な語用を解明することも,多様性を踏まえた共生の追求に必要な基礎的作業となりうると考えられた.