社会言語科学
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用法に地域差が伴う言語表現に対する相互評価 : 関東と関西の比較
尾崎 喜光
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2003 年 5 巻 2 号 p. 58-73

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抄録

関西では男女共通に使われるが関東では主として男性の間で使われる間投助詞「なぁ」と推量的確認表現「やろ」(関東では「だろ」)について,関西の女性がこうした表現を使った場合,関東の人がそれをどう評価するか,また関西の人は関東の人がどう評価しているとイメージするかを調べた.その結果,判断保留的な回答を除く部分で見ると,関東の人は「良い感じがする」と肯定的に評価する人の方が,「あまり良い感じがしない」と否定的に評価する人よりもむしろ多いことが分かった.その一方で関西の人は,関東の人は「あまり良い感じがしない」と否定的に評価しているだろうと考える人の方が,「良い感じがする」と肯定的に評価しているだろうと考える人よりもむしろ多かった.関東の人は,関西の女性が使うこうした表現を,当の関西の人が推測するほどには否定的に受け止めていないようである.他方,関西では使用がそれほど一般的でないが関東では男性よりも女性の間で一層よく使われている間投助詞「ねぇ」と推量的確認表現「でしょ」について,関東の男性がこうした表現を使った場合,関西の人がそれをどう評価するか,また関東の人は関西の人がどう評価しているとイメージするかを調べた.その結果,判断保留的な回答を除く部分で見ると,関西の人は「あまり良い感じがしない」と否定的に評価する人が5〜6割と多数を占め,「良い感じがする」と肯定的に評価する人よりもはるかに多いことが分かった.その一方で,関東の人も,関西の人は「あまり良い感じがしない」と否定的に評価しているだろうと考える人の方が,「良い感じがする」と肯定的に評価しているだろうと考える人よりも多いものの,否定的な評価の数値は当の関西ほど高くなく,実際よりもやや楽観的に推測しているところが見られた.

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© 2003 社会言語科学会
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