2004 年 7 巻 1 号 p. 75-83
奄美諸島では,急速な勢いで共通語化が進み,伝統的な方言が消失する寸前である.本論文は,奄美諸島の与論島方言をとりあげ,対話資料により,世代間の方言変容の実態をしめし,どのような言語要素からどういった変化かおこりつつあるのかを分析したものである.以下のことを明らかにし得た. 1.70代から50代そして30代と音声事象を中心に著しい共通語化か進展している.共通語語彙は,70代では伝統的語形が用いられているが,50代以下では方言の音韻体系にあわせてとりいれられ,世代間の方言差を形成している. 2.共通語化が進展しているものの,30代でも,方言使用に抵抗感がなく,方言は生活語として機能している. 3.10代では,ほぼ完全に共通語化が進み,方言はすでに消失している.彼らの話す共通語は,奄美普通語と呼べる特徴を持っている.