社会言語科学
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7 巻, 1 号
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  • 田中 ゆかり
    原稿種別: 本文
    2004 年 7 巻 1 号 p. 1-2
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/04/30
    ジャーナル フリー
  • 李 相揆
    原稿種別: 本文
    2004 年 7 巻 1 号 p. 3-18
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/04/30
    ジャーナル フリー
    本稿は,韓国と日本における方言地図作製現況を概観する.また今後の言語地図発展の見通しを提言する.言語地図は時間・空間における言語の分布だけでなく,社会階層による分布をも描写するものとして発展し,コンピュータイメージを用いて,2次元の世界から3次元以上の世界を演出するところまで発達してきた.とりわけ将来は,韓国・中国・日本の言語地図を描くプログラムSEALに焦点を当て,韓日言語地図作製システムを発展させる必要がある.言語地図作製のための音声記号のユニコード化と言語地図作製システム開発のための国際協力が真に必要とされるが,これを個人レベルの努力で達成するのは困難である.これからの韓国・中国・日本共同の言語地図作製システムは,シンボルと音声データを含む社会言語学的言語地図作製システムに発展していくだろう.
  • 井上 史雄
    原稿種別: 本文
    2004 年 7 巻 1 号 p. 19-29
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/04/30
    ジャーナル フリー
    この論文では,従来分析を進めてきた日本語標準語形の地理的分布データについて,新たな地理的情報を加え,二つの単純化技法を適用した.一つは地理的位置を鉄道距離によって表現したことである.もう一つは2次元的な地理的情報を点で表わして,日本列島を東西の1次元で示したことである.これにより,もう1次元に別現象を表示できる.ここでは県ごとの標準語形使用率を示した.地理的位置と標準語使用の散布図にあたる.本論文では「河西データ」を用いた.『日本言語地図』(LAJ)の一部項目の数値データである.鉄道距離という広義の社会言語学的情報を加え,県ごとの標準語使用率との関連を分析した.東京と京都の影響力の大きさをくらべることにより,標準語形使用に古都京都が基本的な力を及ぼしていたことと,東京からの伝播が地域的にも時期的にも限られることが,読み取れた.本稿ではこの考察をふまえて,社会言語学の理論的問題にも言及する.
  • 大橋 純一
    原稿種別: 本文
    2004 年 7 巻 1 号 p. 30-40
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/04/30
    ジャーナル フリー
    新潟県阿賀北は,その北・東部において山形県・福島県と接し,新潟県下越にありながらも,それらとの中間的・過渡的性質を内有した方言域として特立している.語中・尾ガ行音もその例にもれず,小域ではあるが,[^〓g]〜[~g]という,全国的にも稀少と言える相の分布を今に残している.本稿では,その現在状況を,実相の機械分析と分布の全域的把握とによって明らかにするとともに,各実相の実現傾向やその意味について,主として音環境の観点から分析を加える.その結果として,[^〓g]〜[~g]の相が,当域にはなお多域・広範にまたがってみとめられること,ただしその実現の仕方に,音節構造による規制や当該子音に対する前・後接母音の広狭関係等が関わる場合のあることを論じるものである.
  • 白勢 彩子
    原稿種別: 本文
    2004 年 7 巻 1 号 p. 41-50
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/04/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,幼児期における単語アクセントの獲得過程と,それに影響を及ぼすものと考えられる,幼児が生育する環境に出現する語彙におけるアクセントについて,日本語の代表的な方言アクセントを対象とした比較研究を行なった.対象は共通語アクセント(東京方言),京都方言アクセント,鹿児島方言アクセントの3体系である.単語アクセントの発話実験を幼児に行なったところ,東京および京都方言アクセントとは異なって,鹿児島方言アクセントでは成人と異なるアクセントを生成する,すなわち誤りのアクセントを生成するとの結果であった.この結果は,幼児がアクセントを誤って獲得することがないという従来の見解が言語普遍的ではないことを示唆するものである.幼児を取り巻く環境のアクセント分布を調査したところ,東京方言および京都方言ではアクセントに偏りが見られる一方で,鹿児島方言ではアクセントに偏りが見られなかった.この調査結果と上記実験結果とを総合的に検討し,幼児の単語アクセント獲得過程を議論する.
  • 日高 水穂
    原稿種別: 本文
    2004 年 7 巻 1 号 p. 51-62
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/04/30
    ジャーナル フリー
    東北地方を中心に,目的語を表示する格助詞としてコト・トコ類の表現を用いる方言がある.このコト・トコ類の表現には,前接名詞が有情物に限られるという使用制限があるが,コト・トコ類使用地域の中にはこの制限を失いつつあるものがある.既存の方言テキスト(方言で書かれた文学作品,昔話資料)から採集した用例を分析すると,青森県津軽地方と日本海側の沿岸部においてはコト・トコ類の使用制限が失われる傾向にあり,日本海側の内陸部および太平洋側の地域では維持される傾向にあることが分かる.これはすなわち,コト・トコ類の用法に関して,青森県津軽地方および日本海側の沿岸部では文法化の度合が進んでおり,日本海側の内陸部および太平洋側の地域では文法化の度合が遅れている(前段階の用法が維持されている)ものと考えることができる.
  • 小西 いずみ
    原稿種別: 本文
    2004 年 7 巻 1 号 p. 63-74
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/04/30
    ジャーナル フリー
    富山・金沢方言では,共通語の形容詞連用形〜クに対応する形が,ナイやナルが後続する場合と,副詞的修飾を行う場合とに分かれており,さらに,後者には「前者の形+ナト・ラト」と「連体形+ガニ」がある.本稿ではこれらナト・ラト形,ガニ形の意味・用法を記述し,その発達過程を考察した.ガニ形は,金沢方言においては,結果の修飾用法も様態の修飾用法も持つが,富山県内の方言では結果の修飾用法はあるが様態の修飾用法がない.この差から,富山方言のガニは「形式助詞ガ+助詞ニ」という語源的構成・意味を保ったものだが,金沢方言のガニはそのような語源的構成・意味を失い,より文法化したものだと考えられる.ナト・ラト形は,富山・金沢方言ともに,ガニよりも広い用法を持ち,形容詞を副詞化する接辞としてより発達したものだと言える.
  • 町 博光
    原稿種別: 本文
    2004 年 7 巻 1 号 p. 75-83
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/04/30
    ジャーナル フリー
    奄美諸島では,急速な勢いで共通語化が進み,伝統的な方言が消失する寸前である.本論文は,奄美諸島の与論島方言をとりあげ,対話資料により,世代間の方言変容の実態をしめし,どのような言語要素からどういった変化かおこりつつあるのかを分析したものである.以下のことを明らかにし得た. 1.70代から50代そして30代と音声事象を中心に著しい共通語化か進展している.共通語語彙は,70代では伝統的語形が用いられているが,50代以下では方言の音韻体系にあわせてとりいれられ,世代間の方言差を形成している. 2.共通語化が進展しているものの,30代でも,方言使用に抵抗感がなく,方言は生活語として機能している. 3.10代では,ほぼ完全に共通語化が進み,方言はすでに消失している.彼らの話す共通語は,奄美普通語と呼べる特徴を持っている.
  • 友定 賢治, 陣内 正敬
    原稿種別: 本文
    2004 年 7 巻 1 号 p. 84-91
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/04/30
    ジャーナル フリー
    近年,関西方言が,一度東京を経由しての全国発信であるが,若年層を中心に全国的に広がりつつあり,地元方言や共通語とともに新しいスピーチスタイルが形成されつつある.それは単に「ことば」だけではなく,関西的なコミュニケーションの受け入れという面がある.関西的な「楽しさ」「笑い」が,現在の豊かな社会・娯楽社会での,会話を楽しむという時代風潮に一致したためであろう.関西方言受容の背景にある日本人のコミュニケーション観にも変化が生じているということである.
  • 吉岡 泰夫
    原稿種別: 本文
    2004 年 7 巻 1 号 p. 92-104
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/04/30
    ジャーナル フリー
    首都圏と大阪のネイティブを対象に,ポライトネスの観点から,(1)コミュニケーション意識,(2)敬語行動,(3)規範意識について調査した結果,それぞれ次のような地域差・世代差がみられた.(1) 普段の会話で「楽しく話すこと」を大事にする意識は大阪ではどの世代でも高い.首都圏では若い世代ほど高く,上の世代ほど低い.改まった会話で「正しく話すこと」を大事にする意識は首都圏ではどの世代でも高く,特に60代以上で著しい.大阪は首都圏に比べて低く,特に60代以上では20ポイント程度の差がみられる.(2) 改まった場面の敬語行動をみると,首都圏は,若い世代で尊敬語・謙譲語を含まない敬意レベルの低い形式の使用が目立つのに対して,上の世代で敬意レベルの高い尊敬語・謙譲語を含む形式(二重敬語も含む)の使用が目立つ.大阪ではすべての世代で,敬意レベルの低い尊敬語や,仲間内マーカーの働きも併せ持つ方言敬語,方言の受益表現が使われている.(3) 敬語についての規範意識をみると,敬語の過剰な使用である二重尊敬に対して,首都圏の方が大阪に比べてより肯定的である.これらの結果を,Brown & Levinson (1987)のポライトネス理論の枠組みから捉えると,次のような地域的・世代的な傾向がみえる.首都圏は若い世代を除いて,敬語形式の丁寧さ,礼儀正しさを重視したネガティブ・ポライトネスに比重をかける傾向がある.大阪は,お互いの心理的距離を縮めたいという欲求に働きかけるポジティブ・ポライトネスに比重をかける傾向がある.若い世代ではポジティブ・ポライトネス重視の傾向が首都圏・大阪で共通している.
  • 小林 隆
    原稿種別: 本文
    2004 年 7 巻 1 号 p. 105-107
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/04/30
    ジャーナル フリー
    現代方言の社会的意味について,共通語と対比しつつ,方言の性格や機能の変貌という視点から考える.結論として,現代方言には「アクセサリー化」とでも呼ぶべき質的変容が起こりつつあることを指摘する.
  • 山浦 玄嗣
    原稿種別: 本文
    2004 年 7 巻 1 号 p. 108-119
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/04/30
    ジャーナル フリー
    岩手県気仙地方の言語ケセン語には文字がなかった.著者はこれにケセン仮名という固有の文字を与え,さらにその不足を補ってケセン式ローマ字を考案し,文法的構造から音調までも正確に記述できる正書法を確立した.その文法体系を総合的に記述し,これを学習するための教科書を作成した.またすべての語彙に豊富な用例がついている,3万4000に反ぶ語彙項目を収載する辞書を編纂した.これらの研究によって,ケセン語による文学の創出が可能になり,多くの作品群を生み出した.方言差別による劣等感に悩んできた気仙衆は大きな勇気と誇りを回復している.ケセン語による詩作,歌曲の創作,ケセン語演劇の劇団の活動,ケセンそのものについての数多くのテレビ・ラジオ番組などが次々に生まれ,最近はギリシャ語原典から直接ケセン語に翻訳された,朗読CDつきのケセン語訳新約聖書も発行されている.文字は文化を発展させるのだ.
  • 原稿種別: 付録等
    2004 年 7 巻 1 号 p. 125-
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2017/04/30
    ジャーナル フリー
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