抄録
オマーンオフィオライト北部において、モホ遷移帯付近よりpH11を超える高アルカリ泉の湧出が認められている。高アルカリ泉は、低温で非常に還元的な性質を持ち、高いCa濃度と低いSi、Mg濃度を示すことが特徴的である。この高アルカリ泉の生成過程を考察するため、高アルカリ泉と湧出口付近で地表水との混和により生成している白色の沈殿物の分析を行った。沈殿物試料は全てアラゴナイトやカルサイトを多く含んでいた。このほかMg含有鉱物であるハイドロタルサイトを特徴的に含む試料があった。ハイドロタルサイトの生成には、高アルカリ泉中のAl濃度が大きく寄与していた。またIR・SEM-EDX分析より、ハイドロタルサイトが陰イオンとしてケイ酸イオンを含有していることが明らかとなった。高アルカリ泉の進化過程において、ハイドロタルサイトの生成がSiおよびMgのシンクとして重要な役割を果たしていることが推察される。