抄録
地下水ヒ素汚のある中国内モンゴル五原県銀定図郷建設村二社と豊楽村七社で行った掘削深度32mのボーリング試料を採取し検討した。二社は各戸にある井戸水のほとんどが中国のヒ素基準値(0.05mg/l)の5~6倍の濃度に汚染されている。堆積物は更新世から完新生の細粒堆積物で大きな特徴は15m付近から下部になるにつれ異常に黒い黒色砂に変化する。XRD、XRFを用いて構成鉱物、主要元素及びヒ素を含む微量元素組成の検討を行った。またヒ素の化学結合形態を調べるため選択的逐次抽出法(SSE)を実施した。黒色の原因を解明するため黒色砂への変色実験と変色砂を用いた微生物の培養実験を行った。黒色砂については透明な石英、長石などに、溶け出したFe2+と硫化水素のS2-が結びつき硫化鉄様構造を形成することが黒色の原因となっていることがわかった。構成鉱物についてはず堆積物の粒度によって変化する特徴を示す。微量元素でAsは粘土質部分に多く平均約25mg/kg、砂質部分では約8mg/kgであった。黒色砂と上部の褐色砂でのAs含有量の違いはみられない。AsとFe2O3、V、LOIの間に強い正の相関が見られた。SSEをおこなうと、強い還元状態で非晶質鉄に吸着していたヒ素が多く溶け出すこととわかった。特徴的な黒色砂の成因を調べるため、硫酸塩還元バクテリア(以下,SRB)培養実験を行い黒色化を再現した。これらの実験よりSRBが、活動しやすい状況(硫酸イオン濃度)があり、著しい還元環境(ORPメーター値の読みで-700_m_V等)をつくりだし、ヒ素を溶出するというメカニズムがほぼ解明された。