抄録
札幌市手稲区にある手稲鉱山より,我が国初産のクラウト石が確認されたので,その産状,化学組成等について報告する.
本鉱物が含まれる鉱石は石英と,それを覆うコロフォーム状の菱マンガン鉱を主体とし,内部に1~2mm程度の自然砒・鶏冠石と毛鉱状の輝安鉱を含む.鶏冠石と隣接している菱マンガン鉱を源鉱物として100~500μm程度のクラウト石・ガイガー石が産する.
WDSを用いた定量分析によると手稲鉱山産クラウト石の組成(wt.%)はMnO 33.2%, As2O5 54.2% であり,理想式MnAsO3(OH)(H2O)の値MnO 33.33% , As2O5 53.99% と極めてよく一致した.