赤門マネジメント・レビュー
Online ISSN : 1347-4448
Print ISSN : 1348-5504
ISSN-L : 1347-4448
連載
コンテンツ・ビジネスの未来 第四回
日本のコンテンツ競争力と政策のあり方
岸本 周平鈴木 寿一郎
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 4 巻 9 号 p. 445-458

詳細
抄録

コンテンツ産業もまた産業として国際的な競争を行っており、競争力をどうやって高めるかという問題をたてることができる。たとえば、全般的にアメリカ製のコンテンツの国際競争力は日本・ヨーロッパに比べて高いことが多い。またコンテンツの種類によっても違いがあり、日本の場合、(実写)映画の競争力は弱いが、ゲームとコミックは強い競争力を持っている。このようにコンテンツの競争力に差があるのはなぜだろうか。そしてそれを高めて行く方法があるのだろうか。今回はコンテンツ産業の競争力をどう高めるかという観点から二つの報告を掲載する。岸本周平氏は、コンテンツ産業の競争力を高めるためには、コンテンツ制作者への報酬配分を高める必要があると主張する。報酬が低いのはコンテンツの流通をになうメディア部門(テレビ局や映画会社など)の交渉力が強く、いわば優越的地位にあるからであり、公正な取引のためのルール作りが必要であると述べる。また、コンテンツ制作側の自主性を高めるために資金調達の多様化を進める必要があり、それを妨げる制度的障壁がまだ残っているとしている。鈴木寿一郎氏は、プロデューサーの役割の重要性を説く。プロデューサーとはディレクターとは違い、ビジネス面を含めて作品を成功させる人のことである。日本ではプロデューサーの不足が指摘されており、氏の属するC&R社はプロデューサーの支援に早くから取り組んできた企業である。両氏の報告に共通する問題意識は、コンテンツ制作側の地位の強化と思われる。日本では、コンテンツを流通する媒体企業、すなわちテレビ局や映画会社の力が強く、相対的にコンテンツを作る制作側の力が弱かった。これを強める必要があるというのが両者の共通認識になっている。(要約:田中辰雄)

著者関連情報
© 2005 特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
次の記事
feedback
Top