断層帯における鉱物沈殿現象は、1. 断層帯の強度回復、2. 浸透率減少に伴う流体圧の増加-有効応力の減少-新たな破壊の誘発、という相反する2つの現象の要因であり、地震サイクルを考える上で重要な要素と考えられている (e.g. Sibson et al., 1988; Cox, 1995)。しかしその機構や時間スケールには不明な点が多く、地球化学的もしくは実験的アプローチに基づいた制約が望まれる。沈み込み帯の陸上アナログと考えられる過去の付加体中の断層近傍には多量の鉱物脈が観察され、地震時の活発な流体移動・鉱物沈殿が示唆される。本研究ではこのような付加体の大規模衝上断層沿いに見られる鉱物脈の微細組成分析から、沈み込み帯における断層運動と鉱物沈殿の関係、および断層帯内部で起こる地震時の化学反応について考察する。