抄録
西南日本,紀伊半島の中新世珪長質火山地域(MFVK)において,圧縮応力場のテクトニック・ローカル応力の変化に呼応した大規模珪長質火山システムの形成過程を検討した.岩体の放射年代測定値から,MFVKではおよそ1500km3を超えるマグマが10万年~160万年以内に噴出した.長期の平均噴出率は10-2 to 10-3 km3/ka km2に達し,世界のLFVFsの中でも最も大きな部類に入る.この高い噴出率と巨大なマグマ溜りの存在は,テクトニック応力との関係から以下のように説明できる.シル状のマグマ溜りには圧縮応力場が好都合であり,巨大化するには高いマグマ供給率が不可欠である.MFVKでは,強い圧縮応力場と高いマグマ供給率が,活動初期にマグマの蓄積を助長し,巨大マグマ溜りを形成した.マグマ溜りは,過剰圧を溜め込み,テクトニック応力を緩和した結果,マグマが地表に達することが可能となった.