抄録
愛媛県大洲市秩父帯北帯の緑色岩に産するパンペリー石のFeの酸化数,XおよびY席における分布,およびそれによる結晶構造変化を検討した.平均total Fe2O3含有量が10.01wt.%の試料1と16.04wt.%の試料2のX線回折データを測定し,リートベルト解析を行った.試料1についてはFe2+:Fe3+比をメスバウアー法により決定し,試料2はその結果を適用した.これらの結果より,試料1の化学式は(Ca7.96Na0.01K0.02)Σ7.99(Al1.62Mg1.19Fe3+0.57Fe2+0.53Mn0.09)Σ4.00(Al6.47Fe3+1.53V0.02Ti0.01)Σ8.03Si12.25O40.75(OH)15.25,試料2は(Ca8.07K0.01)Σ8.08(Al1.21Mg0.96Fe3+1.00Fe2+0.83Mn0.02)Σ4.02(Al5.69Fe3+2.33V0.01)Σ8.03Si12.02O47.40(OH)8.60となった.X席とY席におけるFe3+とAlの結晶内分配係数KDは,試料1では1.49,試料2では2.02であり,Fe3+はX席を選択する傾向が強いことが確認された.