抄録
国東半島に位置する両子山火山のマグマの地球化学的特徴から、九州におけるアダカイトの時空分布を明らかにするため、10試料の溶岩を採取し風化作用を被っていないと考えられる1試料を選定し、その微量元素組成を求めた。その結果、LILEの富化、Nbの負の異常などの島弧マグマの特徴が観察された。また、姫島火山群の微量元素組成(伊藤, 1990)と両子山は非常に良く似たパターンを示す(図1)。姫島の第四紀マグマのSr/Y比は約5から約70の広い範囲を示し、その多くは25以上である。この特徴は、沈み込むスラブの部分溶融がそのマグマの起源であると考えられているアダカイト(Defant and Drummond, 1990)の示す特徴である。したがって、九州ではアダカイトが、姫島・両子山・由布・鶴見と連続的に分布し、その活動は1.1~1.5 Maから始まり7万年以降まで継続していると考えることができる。