抄録
宮崎県日之影町大吹鉱山からotaviteの産出を確認した。Otaviteはカドミウムの炭酸塩、三方晶系の鉱物で方解石と同構造、方解石グループに属する。1906年にナミビアで発見されたが本邦では初めての確認である。ナミビアの地名Otaviに因み命名された。日本名は方解石グループの命名習慣により菱カドミウム鉱とするか、由来の地名を尊重しオタビ石とするのが望ましい。大吹鉱山産のotaviteは、いわゆる褐鉄鉱の空隙に晶出する異極鉱結晶の上に、含カドミウム方解石とともにみられた。直径約0.3ミリメートルの白色の球顆として産し、他の二次鉱物は伴わない。球顆の研磨面における後方散乱電子像は、周辺部が暗く中央部が明るい。EPMAによる化学分析ではCdとCaの主要元素の他、微量成分としてZnが検出された。Otavaite成分は64-86mol%の範囲にあり後方散乱電子像に対応し中央で高い。X線粉末回折実験による主要回折値(d/I)は、3.795(13),2.972(100), 2.761(3), 2.465(89), 2.253 (4), 2.070(11), 1.893(6), 1.860(15), 1.839 (13)で、格子常数:a=4.927 , c=16.553(Å)をあたえる。