北海道東部の屈斜路火山における最大規模カルデラ形成噴火(KpIV)の推移を明らかにするため,野外調査と本質物質の岩石学的検討を行った.KpIVは,降下軽石(Pfa)とそれを覆う軽石流堆積物(Pfl)およびスコリア流堆積物(Sfl)からなる.Pfaの分布域は極めて小さく層厚も薄い.Pflはカルデラ周縁に分布するが,分布域の北西と南東側で岩相が異なり,北西側にのみ少量のスコリアが含まれる.Sflは,Pflの上位に侵食面を介し,北北東方向に限って認められる.PflとSfl中のスコリアはそれぞれ化学組成が異なる. KpIVの噴火推移は以下の通りである.Pfaを供給した噴煙柱は不安定で,噴火後すぐに火砕流が発生した.Pflの火口は北西と南東側に存在し,それぞれのPflは地形に制御されて流下した.最後期には,それまで優勢であった白色軽石が減少し,スコリアを大量に含むSflが,北北東方向のみに流れて噴火が終息した.スコリアを供給したマグマは北西火口側に偏って注入した.