抄録
中国東部・蘇魯地域のTaohangで採集されたエクロジャイトの上昇履歴を推定した。先ず、ザクロ石のコアとオンファス輝石のコアの組成に地質温度圧力計を適用すると、約700°C, 3.4 GPaの温度圧力条件が得られた。またザクロ石のリムとそれに隣接する場所のオンファス輝石のリムの組成に温度計を適用すると1.5 GPaにおいて566±54°Cの温度が得られた。以上のように、減圧時の温度は最高圧力時の温度より明瞭に低く、このエクロジャイトは冷却されながら上昇したと考えられる。
しかし、これまでの推定では、蘇魯地域の超高圧変成岩の上昇パスは等温減圧となっている。こうした等温減圧の履歴は、超高圧変成岩が厚さ数十kmの大きな岩体として上昇し、その中心部に位置していた為、周りからの熱の影響がなかったことを示唆している。一方、本研究地域のエクロジャイトは上昇している超高圧変成岩体の縁に位置していた為、周りからの冷却を受けたと推測される。