抄録
中国地方山陰側中央部に位置する和久羅山デイサイトは,後期中新世~鮮新世の珪長質溶岩である.今回,全岩化学分析とSr-Nd-Pb同位体比分析を行った結果,和久羅山デイサイトはアダカイト(Defant and Drummond, 1990)と考えられている大山火山と類似した組成を示す.これは,和久羅山デイサイトの起源マグマとして大山火山同様,フィリピン海プレートの部分溶融が考えられる. 今まで山陰では,第四紀火山からアダカイト質マグマが認められたことから,フィリピン海プレートのアダカイト質岩の発生源は2 Ma以降に山陰下に到達したと考えられてきた(Kimura et al., 2005).しかし,和久羅山デイサイトが大山火山と同様,プレートの部分溶融を起源とするなら, 5 Maにはすでにプレートのアダカイト質岩の発生源は山陰下に到達し,アダカイト質岩の生成に関与していたと考えることができる.