鉄は大気中に含まれる主要な遷移金属の一つで、大気化学や生物学的過程において重要な役割を果たすと考えられている。本研究では、2010年3月末に東アジアで起こった大規模な黄砂を合肥と福岡で同時に採取したサンプルについて電子顕微鏡による直接分析と、XAFS、XRDを用いたバルク分析を組み合わせたマルチスケール解析を行い、黄砂中の鉄含有鉱物についてその特性を明らかにした。その結果、本研究対象の黄砂中における鉄含有鉱物相は複数種存在し、かつ粒径に依存するが、優勢な相に関しては付着している三価の微粒子である可能性が示唆された。さらに今回の中国~日本間の黄砂輸送時における鉄成分化学種の変化は無視できる程度であることがわかった。