抄録
大気中微粒子の負の健康影響が注目されている中で、主要な元素である鉄に注目し化学状態解析を行った。大気試料は福岡県福岡市で、カスケードインパクターとハイボリュームエアサンプラーを用いて採集した。XANES解析の結果、Feは主に3価で存在していた。SEM-EDXの点分析(469点)を行った結果、粒径1 µm以上のFe含有粒子にはSiとAlが多く含まれており、粒径1 µm以下ではSiの割合が減少しSの割合が高くなっていた。TEMを用いた個別微粒子分析から、粒径1 µm以下のFeを含む粒子では球状のマグヘマイト(γ-Fe2O3)の割合が高く、また球状であることより粒子表面の活性部位が多いと考えられる。さらにTEM-EDXの結果、粒径100 nm以下のマグヘマイトにはMnが多く含まれており、共存しているクロムなどの重金属の酸化が促進され、粒子の生体への毒性が強まると考えられる。